事件は復活祭の前の受難週に入った4月15日に起こった。
パリのノートルダム大聖堂火災のニュース。
テレビをつけたら、本当にボーボーと赤い炎が出ている。
消防隊により鎮火されたが屋根と尖塔は焼き尽くされた。
パイプオルガンと13世紀制作のバラ窓はかろうじて難を逃れたようだ。
1163年以降、増築と修復を繰り返しながら歴史を重ねてきたノートルダム大聖堂。そこはパリの起点であるとともに、疫病、戦禍、革命をくぐり抜けてきたフランスそのものとも言える。
中世にはこの聖堂でノートルダム楽派と呼ばれる作曲家たちが活躍、ヨーロッパ音楽の源流でもある場所だ。
ヴィクトル・ユーゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」を読んだことはなくても、それを原作にしたディズニー映画「ノートルダムの鐘」を見た人は多いだろう。
ユネスコの世界文化遺産に指定されている大聖堂の火災は、カトリック教徒でなくともショックな出来事である。
マクロン 大統領はこの日、予定していたジレジョーヌ への演説をとりやめてノートルダム大聖堂前にて深い悲しみを表明、焼失部分を5年で再建すると述べた。既に多額の寄付の申し出がいくつも上がっている。
しかしこのマクロン の再建宣言と多額の寄付がジレジョーヌ たちに新たなる怒りの火をつけてしまったようだ。
「政府や資産家はノートルダム再建には迅速に多額の出費をする用意があるのに、なぜ我々の状況を顧みようとしないのか」
ジレジョーヌ 運動は、地方に住む人々が燃料税の値上げに反発したことに端を発している。家賃の安い郊外に住む人にとって車は必需品であるため、燃料値上げは即日常生活に響くのだ。今では格差社会への反発の代名詞となる一方、実態の把握できない暴力的なデモも増えた。
フランスの資産家たちがここぞとばかりノートルダム再建の寄付を申し出るのには、名誉心も少なからずあるだろう。由緒ある大聖堂再建に名を残すことができる。
本来の姿に忠実に修復再建するのか、全く新しい形で再建するのかという議論が既に始まっている。
ノートルダムNotre-Dameは聖母マリアのことだ。
教会を訪れる信者たちは、罪深きエヴァの子孫である自分たちをキリストに執りなして救ってくれるようマリア様に祈る。
慈悲深き聖母マリアに捧げる聖堂のため多くの人が寄付をするだろう。
高額な寄付金の一部を困窮している人々のために使えば救われる人は増えるかもしれない。しかしそれでは再建の寄付金を別の目的に使ったことになる。
フランス政府はジレジョーヌ の不満に蓋をしたまま大聖堂を再建するのだろうか。
ノートルダム再建が人々の幸せの延長線上にあることを願う。
リサ
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