5月14日、スウェーデンのストックホルムで「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2016」の決勝戦が行われました。
このコンテストは、欧州最大規模の歌謡祭です。
最後の視聴者投票で、ウクライナ代表のジャマラ(Jamala)が大逆転優勝を成し遂げました。
曲のタイトルは「1944」。ジャマラは旧ソ連の独裁者スターリンに強制移住させられたタタール人の一人、彼女の曽祖母の体験を歌にしました。
「見知らぬ人々があなたの家にやってきてみんなを殺す。そして彼らは言うのよ、”我々は無罪だ”と」「私たちは、人々が自由に生き愛する未来を築くことができる。」
ジャマラはこの曲の最後の部分をクリミアのタタール語で歌っています。
彼女がウクライナ代表で出場し、優勝したことは大きな反響をよんでいます。
ロシア側からは政治的な歌だと批判の声が上がっています。
ソングコンテストでは政治的な曲が禁止されているので、歌詞の中に特定の国や人物は言及されてはいません。しかし1944年はクリミア・タタール人追放があった年です。そしてこの曲は暗に2014年にクリミアがロシア編入されたことへの不当性を訴えている、と捉えられるようです。
歌謡コンテストとはいえ、聴衆は各国の国旗を携えて応援しているわけで、どうしても政治的な一面がクローズアップされてしまいます。
様々なオリジン
ユーロヴィジョンでは移民系歌手の活躍が目立ってきているように思えます。
2012年度の優勝者、スウェーデン代表のローリーンは、モロッコのベルベル人の血を引いています。
フランス代表のアミール・アッダードの歌う「J’ai cherché (私は探した)」は6位となり健闘しました。アミールはチューニジアとモロッコの両親のもと、フランスのパリで生まれました。8歳の時に両親とともにイスラエルに渡り育ったのでイスラエル人です。
審査員投票では一位だったものの、視聴者投票の結果2位となった、オーストラリア代表のダミ・イムは、韓国のソウル出身。9歳の時に両親とともにオーストラリアに渡りました。
私はフランスで暮らしていますが、「あなたの国籍は」とか「ご出身はどこですか」と尋ねられることはあまりありません。「あなたのオリジン(Origin, ルーツ)はどちらですか」と聞かれることの方が多いのです。
イタリアにいた時は率直に「どこの国出身」「何人なの」と尋ねられました。フランスほど多民族国家ではないからでしょう。
私のフランス語の発音がどんなにひどくても、見かけが明らかにフランス人ではなくても、もしかしたらこの人はフランスに帰化しているかも、という可能性は無視できないので、「オリジン」という表現をするのかもしれません。
リサ 5月17日 リヨンにて
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