フランスのヨーロッパ文化遺産の日であった9月18日、リヨンから車で一時間ほどかけてクリュニー修道院で開催されたコンサートに行ってきました。
「Orient –Occident (東洋—西洋)」と名付けられたこのコンサート、プログラムを企画したのは、スペインのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、ジョルディ・サヴァールです。
演奏されたのは、古いスペインのキリスト教、ユダヤ教、イスラム教徒の器楽曲、中世のイタリア、モロッコ、イスラエル、ペルシャ、アフガニスタン、アルメニア、オスマン帝国の音楽。つまり、地中海を取り囲む国々の音楽で、ここでの東洋は中東を指しています。
戦争とテロの被災者へ捧げるプログラムだったのですが、演奏者の一人でトルコのカーヌーン奏者ハーカン・ギュンギョルさんは、この演奏会の数日前イスタンブールで何者かに銃撃をうけ、足を負傷してしまいました。この演奏会のため松葉杖をついて来仏しました。
イスタンブールの日常は想像以上に危険な状況にあるようです。
サヴァールと共演したのは、前述のカーヌーン奏者ハーカン・ギュンギョルと、イランのサントゥールやアラブ圏の音楽には欠かせないウード等々マルチに演奏できてしまうギリシャ人のディミトリ・プソニス。
中世スペインの古楽器と中東で今も演奏されている民族楽器との音楽セッションは、この修道院に10世紀から残る柱頭の下で繰り広げられました。
ヨーロッパの音楽を遡っていくと、中東やアフリカからの影響を多分に受けているのを感じます。
サヴァール氏は、ヴィオラ・ダ・ガンバではなくレバブ(Rebab)とLire d’archetという中東から中世スペインに伝わった楽器を手にしていました。この方なら弦が張ってあって弓を使う楽器なら、何でも弾いてしまえそうです。
カーヌーンという楽器は、ヨーロッパのハープや日本のお琴に相当すると思うのですが、音の数がものすごく多いという印象を受けました。なんでも、一音の間にさらに分割された音がいくつも存在するのだそう。シャラララーンと煌びやかでマジカルな響きが私たちを摩訶不思議な世界に連れて行ってくれます。
かつて地中海周辺の国々の関係は驚くほどに親密であり、もともと宗教の母体も同じだったのだ、 ということを彼らは音楽を通じて伝えてくれました。
「地中海、我々の文化の中心をなしていたこの豊かな海は、今や戦場とバリケードに成り果ててしまった。我々は文化や宗教の対話からさらに向こう側、魂の対話へと辿り着く必要がある。」(演奏会プログラムより抜粋)
リサ 9月20日 リヨンにて
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